ストライクウィッチーズのSSを書いてます。 その他百合中心で書くつもりですが、普通の日記も書くかも。
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SS「Ilmatar」 (ニパ×エイラ, 30kB)
「今5月だね」
「今5月ですね」

エイラの誕生日SSです。供養。

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Ilmatar



1. -ニパ-


「なぁ」

 まだ空を飛び始めて、間もない頃の話だ。
 初めてこいつの魔法について聞いてみた時の事を、私は今でも覚えている。

「――未来が視えるってさ、どんな感じなんだ?」
「んー?」

 ちょっとした好奇心。未知に対して覚えた単なる興味。
 こいつが未来が視ている感覚っていうものがどういうものか、それを知りたいと思った。

「ソウダナ……」

 イッルは視線を行く手に向け、少し黙り込む。
 空を渡る風が、イッルの色淡い金髪を乱して吹き過ぎていく。雪を抱いた森が、私達の眼下を通り過ぎていく。いくつかの森と湖の上を通り過ぎた後で、イッルはようやく話し始めた。

「──糸紡ぎって、見たことがあるか?」
「あれか? 昔話のお姫様が、塔の中で回してる奴」
「そうソレ。時間って言うのはさ、紡がれる糸みたいな感じでさ。
 過去と今は、一本の糸みたいな物なんだ。分かれ道も寄り道もない一本の糸。
 でも未来っていうのは、糸になる前の繭。繊維が絡まった毛玉みたいなもんでさ。『これから起こること』の可能性が、いくつももつれながら広がってる」
「……うーん」
「時間が私たちの手元に手繰り寄せられると、その糸玉みたいに曖昧な未来が、たった一つの『今』になる。……あのさ、分かるか?」
「まぁ、なんとなく想像はつくけど」

 言葉を選びながら、例え話をゆっくりと語る。多分私にも分かる様に、気を使ってくれたんだと思う。

「どんな可能性があるのか、そのどれが『今』になるのか。それが分かるんだ。私は」
「ふぅん……」
「でもさ。ニパだって普通に、この先どうなるか考えるだろ?」
「うん。まぁ」
「私はそれが外れないだけ」
「――ふぅん」

 それで話が終わる。分かったような分からないような、納得できない気持ちが胸の奥に残る。
 未来が視えると言う感覚がどんな物か、それについては分かったけれど――知りたかったのは、多分別の事。

 私の回復能力や感知系の能力、そして攻撃魔法。ウィッチの持つ魔法は、ほとんどが「今」に対して作用する能力だけど、こいつの未来予知は違う。誰にも見えていない、感知する事すら出来ない「未来」を、ゆるぎない「事実」として捕らえてしまう能力。
 私達の持つ魔法とは、文字通り次元の違う能力。私と同い年のこいつが、それを持っているって言うのは、一体どんな気持ちなのか。それを知りたかったんだと思う。

「……」

 傍らを飛ぶイッルの横顔に視線を向ける。
 行く手をぼんやりと見つめているイッル。細い手足を無造作に伸ばし、風に乱される細い髪に頬や耳を撫でられるまま、飛び続けるこいつ。夜明け前の空の色が映りこんだような青紫の瞳。普段は親しげに語りかけてくれるこいつの、遠いところを見るような視線。
 こいつのこんな姿を見ると、その美しさに目を奪われると同時に、その目に何が映っているのか、それが途端に分からなくなる。
 未来が視える魔女。私には見えない物が、誰にも見えない物が、見えているこいつ。手を伸ばせば触れられるほどの距離にいたとしても、確実に私たちと隔てられているこいつ。

「? ドシタ?」
「別に」
 その横顔を見つめていると、イッルが振り返る。考えを見透かされるような透明な視線を向けられて、恥ずかしくなって顔を背けた。
「ソウカ」
 イッルは私の動揺に気づかないまま、両手を広げてループしながら降下を始める。
 空気を切り裂きながら落ちていき、空の中を舞い始めるイッル。上昇と下降、半横転。ある時は一点に留まり、ある時は髪を靡かせて奔り、空の中に軌跡を描いていくイッル。
 奔放で優美なその姿は、私にカレワラに出てくる大気の女神の名前を思い出させた。

「……イルマタル」

 こいつの名前、女神の名前を私は呟く。
 イルマタル。カレワラの主人公である英雄ワイナモイネンの母。
 原初の世界で最初に生まれた、大気の精霊。海鳥が生んだ卵から世界を作り出した創世の女神。でも。
 海鳥と会い世界を作り出すまで、イルマタルは天と海しかなかった原初の世界を一人さまよい続けた。


 空の中を舞うイッル。空の青と雪の白、その間でぽつんと一人。
 最初はただの好奇心。ふと覚えた単なる興味。

「──どういう奴なんだろうな、あいつ」

 その答えを知らない事が、今は寂しかった。





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2. -イッル-


「お、お誕生日おめでとう。イッル」

 隣の椅子に座ってくるなりもじもじと固まっていたニパが、やおらお祝いを口にする。まるで原稿を読み上げるかのような棒読みの口調。配属されて間もない私達が連れてこられた仮設基地の無人の食堂。私は朝食を待ちながら、テーブルの上にタロットを広げている。

「ん。ありがとなー」

 とんとん。広げていたカードを山に戻しながらお礼を言うと、かしこまっていたニパがにへらと笑う。ようやく硬直が解けたのか、椅子をずらして私の隣に寄ってきた。

「早いじゃん。やっぱり誕生日だと早く起きちゃうとか?」
「そんなんじゃネーヨ」
「訓練終わったらお祝いやるからなー。すぐ寝るんじゃないぞー」

 急に馴れ馴れしくなって近づいてくるニパを横目に見る。緊張感のない緩みきった顔。その顔をじとっと横目で眺めて、こいつを占いのターゲットにする事にした。
 こいつを占うと必ずものすごい結果になるので、たまにやるととても楽しい。なお本人は非常に嫌がる。

「なにかくれるのカー?」
「内緒ー」

 ふふっと笑うニパの顔を横目に見ながら、テーブルの上にカードを広げ始める。

「ところでさー、エルマ先輩知らない?」
「出かけたぞ」

 自分が占われているとは知らないニパの質問に短く答えながら、カードをかき混ぜ、そろえて手の中にまとめる。

「そっかー。買い物かな。前々から張り切ってたんだぞー。『エイラさんがここに来てから初めての誕生日ですからねっ!』って」
「ふーん」
「何だよテンション低いなー! まだ眠いのか?
「別に」
「つまんねー。せっかく誕生日なんだからさ、もっとこう浮かれるとか」
「うるさいなー。いーだろー」

 答えながらテーブルの上にカードを三枚並べ、ぺたりぺたりと開いていく。
 吊られた男、運命の輪の逆位置。予想を裏切らない安定した不運っぷりで安心する。

「良くないってー。あの人あんなに張り切ってるのに、お前がそんなんじゃ駄目じゃないか」
「誰が張り切ってたんだよ」
「エルマさんだよ」
「ああ――今日は帰ってないってさ」
「え?」
「――お。出たゾ。ニパの運勢」

 ぺたりと3枚目のカードを開く。雷に粉砕される塔のカード。さすがニパ。オチまで見事。

「ハングドマンとフォーチュン逆とタワーのコンボ」
「……いないの?」
「すごいゾニパ。明日はホームランだ」
「なんだよそれ!!」

 ガタッ。ニパは椅子を蹴立てて立ち上がる。

「何だよ怒りんぼダナ。別にすごい結果が出るのは私のせいじゃないゾ」
「そうじゃなくて!」
「じゃなかったら何だよ」
「エルマさんいないのかって聞いてんの!」
「うるっさいな。もー」

 めんどくせー。カードの山をばらし、再びテーブルの上でかき回し始める。

「──補充のストライカーの受領だってさ。軍港まで行ってる」
「そうなの?」
「向こうに着く頃には陽が落ちてるだろうからな。帰ってくるのは明日ダロ」
「明日?」
「そ。明日。ニパにも謝ってたぞー。ごめんなさいーって」
「なんだよそれ……」

 ぷくっと頬を膨らませるニパがぐいっと詰め寄ってくる。

「大体、お前何も言わなかったのかよ!」
「言ったって困らせるだけダロ。任務なんだし」
「そうだけどさ……」
「じゃ、じゃあさ。せめて基地に残ってる人に私から声かけとくから!」
「いいって。今年はそういう年だったんだろ」

 あ、でもプレゼントはくれヨナー。と言うと、ニパはまだ何か言いたそうに口を尖らせている。

「なんでそんなにあっさり言うんだよ……」
「駄々をこねればエルマさんが帰ってくるわけじゃないだろー。違うかー?」

 手はカードをかき混ぜている。ぶつかり合って小さな音を立てながら、テーブルの上を滑っていくタロット。手に馴染んだタロットの感触。それを確かめるようにその背を撫でる。

「そうだけど、なんでそんな反応薄いんだよ」
「いいだろ別にー。私の誕生日をどう過ごそうと勝手じゃないか」
「そんな事言って、こっちの身にもなれよ……」
「そりゃ、準備してもらって悪いと思うけどさ。あの人がいないと何ていうかさ、祝う意味ないだろ。どうせお前だけじゃ何も出来ないんだし」
「う……」

 しつこく食い下がるニパの態度にいらいらしながら、ぼりぼりと頭を掻き回す。

「大体さぁ……何で私の事で、ニパがそんなに怒るんだよ」
「そんなこと……っ!」

 ニパは真っ赤な頬を膨らませたまま私をにらみつける。大きな青い瞳にみるみる涙があふれ出る。
 ――あ、やばい。そう思ったとき、

「……意地悪!」

 ニパは背を向けて食堂を飛び出していった。


---


「……何だヨあいつ」
 イッルのばかー! という叫び声と騒々しい足音を聞きながら、テーブルの上に散ったカードを再び手の中に揃えた。

(……悪い事、したかな)

 ニパが言いたいことは分かってるし、本当は「そうだよな」って言いたかったけど――私にだって放っておいて欲しい時はあるんだ。
 あいつが私の誕生日の事を大事に思ってくれて、そのために怒った事は分かってるし、エルマさんにだって本当は行って欲しくはなかったけど――。でもそんな事、言える訳ないじゃないか。私達は軍隊にいて、ネウロイと戦ってるんだから。

 揃えたカードを三つに切り、テーブルの上におく。息を止めたままデッキに手をかけ、一枚開いた。

(……帰って来るわけ、ないよな)

 「失望」を表す星の逆位置。
 私にだってついてない日はある。カードを仕舞い込んで立ち上がった。




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3. -ニパ-


 普段の言動からは想像もつかない程優しいこいつは笑ってありがとなと言うだろう。
 けれどそれはきっとこいつが優しいからであって嬉しいからじゃないんだ。


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「何だよ。イッルのバカ」

 板張りの廊下を足を踏み鳴らして歩く。
 何が腹立たしいのか、なんで泣きそうなのか、何故私がそんな気分にならなきゃいけないのか、自分でも分からないけど。

(あんな風に言う事ないじゃないか……!)

 イッルの誕生日がもうすぐだって聞いて、私だって張り切ってたんだ。お菓子の仕込みだって手伝ったし(ほとんどエルマさんがやってたけど)、プレゼントだってイッルの事をいろいろ考えながら選んだのにさ。これなら喜んでくれるかな、でも別な方が好きかなとか、そんな事を考えながら。
 そうだよ。私だってイッルの誕生日を楽しみにしてたんだ。それをあっさり、「どうでもいい」みたいに言う事無いじゃないか。

 そりゃ、エルマさんの事は、任務なら仕方ないし、あいつ自身が「お祝いはいい」って言うなら、私が何か言う事でもないと思うんだけどさ……。どすどすと足を踏み鳴らして私は歩く。頭の中を答えの出ない考えがぐるぐると回る。

「きゃ」
「うわ」

 そのせいで周りの事が目に入っていなかったらしい。角を曲がった所でやわらかい何かにぶつかって、私は跳ね飛ばされた。
 よろめきながら、ぶつかった誰かに肩を捕まれて支えられる。顔を上げると、巻毛の金髪に結ばれた青いリボンが揺れているのが見えた。

「ちょっと。気をつけなさいよ!」

 第一中隊長のアホネン大尉が、甲高い声で私を怒鳴りつけている。

「ご、ごめんなさい」
「全く、いつまで経っても、なんでここにはぼんやりした子ばかり入って来る──あら?」

 大尉はまくし立てる言葉を止め、私の顔を不思議そうに見た。

「どうしたの?」
「はい?」
「今日はあの子と一緒じゃないの?」
「……イッルですか?」
「そうよ」
「あいつなら食堂にいましたけど。別にいつも一緒にいるわけじゃないですし」
「そう。……どうかしたの?」
「別に、なんでもないです」

 じゃ。ごめんなさい。短く謝って立ち去ろうとする。アホネン大尉って、綺麗だけどなんだか苦手だ。
 あの"いらん子"中隊と並ぶ戦果を挙げている、第一中隊の中隊長。誰もが認める実力者。それは分かってるんだけど……。
 要は、なんか、怖い。第一中隊って大尉のハーレムになってるって聞いたし。確かに部下のウィッチ達といつもいちゃいちゃしてるし。エルマさんも「大尉とはお話しちゃいけませんからねっ! 伝染りますからねっ!」ってすごい剣幕で言ってたし。

「ほんとごめんなさい。それじゃ」

 脇をすり抜けて立ち去ろうとすると、アホネン大尉が私を呼び止めた。

「お待ちなさいな」
「なんですか?」
「あの子の誕生日だっていうのに、なんて顔してるのよ?」
「顔?」
「そう。駄々をこねてる子供の顔」
「そ、そうですか」
 泣きそうなの、ばれちゃったかな。慌てて顔に手を当ててこする。いや、それよりも大尉、今イッルの誕生日の事言わなかったか? なんで大尉がその事を知ってるんだよ。
「あの大尉、イッルが今日誕生日だって、知ってたんですか?」
「当然よ。ここにいる魔女は全ていつかは私の列機になるかも知れない子だもの」
「え?」
「でも、それだけじゃないわね……。
 あの子空戦の筋もよさそうだし、ぱっと見人懐っこいくせに未来予知の魔法を持ってるなんて神秘的じゃない。興味をそそられるわ」
「……はぁ?」
 何を、言ってるんですか?
 何だかイッルを褒めてるのは分かるんだけど……何が言いたいんすか。急に落ち着かない気分になってきた私に、嬉しそうな流し目を向ける大尉。
「それにほら、あの子、綺麗でしょう?」
「あの。何が……言いたいんでしょうか?」
「あら。特に含むところは無いつもりだけど」
 にやり。顔を寄せて意地悪な笑顔。
「――あの子に好意を持っているのは、あなただけじゃないって事」
「う……」
 私は言葉に詰まる。そうなんだ。あいつ結構人気あるんだよな。

 そりゃあいつは黙っていれば綺麗だし、模擬戦でも被弾した事が無いぐらい腕もいいし、ああ見えて面倒見はいい奴だし。人気あるのは分かるんだけど。だけど。あいつがそんな目で見られてるって事をはっきり言われると、何だか気分が悪い。
 アホネン大尉の切れ長の眼が楽しそうに笑う。豪奢な金髪の巻き毛をかき上げ、私に向かって高慢に笑う。

「でもエルマ中尉、今日はお出かけなのね。折角の誕生日に」
「そうですね。イッルがそう言ってました」
「あら、本人知ってるの」
「いいんじゃないですか? 本人納得してるみたいですし」

 行っていいですか? これ以上アホネン大尉がイッルの事を話しているのが嫌になって、その場を立ち去ろうとすると、大尉は聞き捨てならない事を口にした。

「寂しい話ね。それなら第一中隊でお祝いしようかしら」
「え? あの、大尉?」
「なぁに?」
「……イッルが、今年はお祝いはいいって」
「そう? でも世の中には『本人の意志とは無関係に、祝いたいから祝う』っていう考えもあるのよ」
「そうですか? でも、知らない人の中に放り込まれても、イッルはきっと楽しくないですよ」
「あら、そうでもないわよ。あの子のイタズラには、いろいろ楽しませてもらっているもの」
「そ、そうなんですか……?」
 イッルがいろんなウィッチに悪戯を仕掛けているのは知ってるけど……第一中隊に手を出してたのか。どうなっても知らないぞ。
 いや、それよりもアホネン大尉が言った事だ。第一中隊でイッルの誕生日を祝うって――そんなことしたら、イッルは──

(……喜ぶんじゃないだろうか)

 イッルが第一中隊のウィッチ(顔よく知らないけど)に囲まれて、鼻の下を伸ばしてるイッルの顔が頭に浮かぶ。途端に嫌な胸騒ぎを感じ始める私。
 そんな私に向かって、アホネン大尉の言葉は続く。

「今でこそ隊は違うけれど、いずれは空で命を預けあうのよ? お互い理解を深めておくべきだと思わない?」
「で、でも……」
「何より自分が生まれた日を、寂しく過ごすなんて悲しい事だわ。
 今から準備すれば間に合うわね。あの子の誕生日をとことん、二度と忘れられないぐらい祝って差し上げ……」
 反論できない私に向かって、大尉はまくし立てる。止まらない言葉のラッシュに私はじりじり焦りを感じ――
「……だ、駄目だって!!」
 気がついた時には、大尉の袖をつかんで声を上げていた。

「あら……?」
「あ……」

 何、やってんだよ、わたし。思わず上げてしまった自分の声が恥ずかしさくて、頬がかぁっ熱くなる。こんな事みんなに知られたら多分からかわれるし、イッルには絶対知られたくないし、大尉だって私の事、多分変な奴だと思って、ほらきょとんとした顔で私を見て――。
「あっはははははは!」
 大尉はすごく楽しそうに笑い出した。

「そうね」
 ひとしきりころころ笑った後、アホネン大尉はしゃがんで私の顔を覗き込む。
「正直な子は嫌いじゃなくてよ。気持ちがすぐに顔に出る子も」
 あと2年って所かしら。良く分からない事を言いながら、大尉が細い指で私の顎の下を撫でる。上品な香水の匂いがふわりと私の鼻をくすぐった。
「あの、やめて……下さい」
 訳が分からなくなって、中途半端に身を引こうとすると、大尉が手を伸ばし、私の頭の上に置いた。

「それだけ大事な人の誕生日なんでしょう? ふてくされてる暇はないのよ」
「え?」
 さっきまでの甲高いしゃべり声とは違う、やわらかい、諭すような調子。
「あなた、あの子に今年はお祝いはいいって言われて、それですねてたでんしょう?」
「あの……なにを、言って……」
「分かるわよ、そのくらい。
 ……あの子に拒まれて、それであの子がどんな気持ちか分からない。それが悲しかったんじゃない?あの子が本当に嫌がっているのか、自分が受け入れられているのか。それが分からないから」
 大尉は私の目を覗き込む。その瞳に目をひきつけられたまま、私はその言葉を聴く。
「そういうのは誰だって分からないの。誰でも怖いの」
 ……でも今この基地にいるウィッチで、一番あの子の事を考えて上げられるのはあなたよ。分かる?」
「……」
 こくり。思わずうなずいていた。
「それなら、自分が何をすればいいのか、何が出来るのか。それを考えて行動なさい」
「……」
 再びうなずいた私のおでこに、唇が押し当てられる感触。
「いい子ね」
 甘い香りを残して、アホネン大尉は立ち上がる。
「あ……あのっ……!」
 呼び止めた私に背を向けて、去っていく大尉。
「手が必要なら言いなさい。お祝い事を楽しむ権利は私たちにもあるわ」


「……何が、したかったんだよ……あの人」
 遠ざかっていくすらりとした背中。揺れる金髪と青いリボン。それを見送りながら、熱さの残る額を拳でごしごしとこする。
(……なんか、大尉にうまく言いくるめられた気がするけど)
 ていうか、からかわれてた様な気がするけど。口惜しいけど、大尉が言ってることは多分正しい。


 少し考えて行き先変更。きびすを返して私は歩き出す。
 何で腹立たしいか、やっと分かった。
 あいつがただ、誕生日なんてどうでもいいって言ったからじゃない。エルマさんがいないと意味ないなんて言って、本当は気にしてるはずなのに、あいつが私に何も話してくれなかったからだ。

 このままでもきっと、明日になればお祝いは出来る。エルマさんがごめんなさいーと笑いながら帰ってきて、私とエルマさんが忙しくお祝いの準備をして、テーブルについたイッルにみんなで「おめでとう」という。そしたらあいつはきっと笑って「ありがとな」と言うだろう。
 でも多分、それじゃ駄目だ。あいつが今日、あの人を待ってる。それを知ってしまったから、このまま引いちゃ駄目なんだ。

(――見てろよイッル)

 お前がどうする気もないって言うなら、私が何とかしてやるよ。



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4. -ニパ-



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「──中尉の周りは、いつも勝手な人達ばかりですね」
 受話器を置いた司令は、睫毛一つ動かさずにそう言った。
「いいでしょう。彼女も夜間飛行は初めてではない筈ですから」
「えと、いいんですか?」
 あっさり話がまとまった事に拍子抜けしながら、間抜けた問いを返す。
「危険を考慮して明日の帰投を命じましたが、機材の到着が早いに越したことはありませんので」
 何事も無かったかのように、司令は書類の山に手を伸ばす。それに目を通しながら、顔を上げずに言葉を続けた。
「中尉が到着したら知らせなさい。私も顔を出します」
「はい。ありがとうございます!」
 私は深く頭を下げる。



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 アホネン大尉とわたしは第一中隊の人たちがてきぱきと会場の準備をしているのを見守る。

「いいの?」
「声かけろって言ったじゃないですか」
「そうだけど……もうちょっと悩むかと思ってたから。随分急に―― 

 『お姉さまどう言う事ですか! また新しいいもうとを増やすおつもりなんですか! 
 『それはまだ分からないわよ。
  でもこの子達は、わたくしたちと一緒に戦う仲間なのよ。今エルマ中尉がいない以上、わたくしたちが出来ることをしてあげたいの
  ……分かって』
 『は、はい……』

 ――ええと、何だったかしら」
「……。まぁその、私一人じゃ多分無理ですし」
「ふぅん」
「……なんですか、変な顔して」
「随分、いい顔になったわね」
「……からかわないでください」
「からかってないわよ」

「でも何よ、準備といってももうほとんど終わってるじゃない」
「そうですか?」
「それに、随分手がかかってるのが分かる。あなた達、エルマ中尉に随分大事にされてるのね」
「……うん」
「でもあの子、ちゃんと戻ってこれるのかしら。一人じゃないから迷うことはないでしょうけど」
「そうですね」
「夜間着陸の設備なんてないわよ」
「そうですね」
「……どうするのよ?」
「それはこれから」


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 そして夜が来て。


「イッル! いるかー?」
 部屋のドアをどんどんとノックする。共同の部屋だから本当はこんな事しなくていいんだけど、今日はイッルを「お誘い」する訳だし。だからノック。
「出て来ーい」
 どんどん。威勢良くドアをたたくと、がたがたと中で何か支度をする音。すぐにドアがゆっくりと開いた。
「――何だよ。うるさいな」
 イッルが顔を覗かせる。制服こそ来ているけれど、ぼさぼさの頭のまま、いつもより青白い顔で私を見ている。
「……何だよ、寝てたのかよ」
「……ニパ。ちょっと入れ」
 相当機嫌悪そうな様子に鼻白んだ私の腕をつかんで、イッルは私を部屋に引っ張り込んだ。


「なんだよもー」
「……」
 不満を漏らすとイッルはじろっと不機嫌そうな視線を向けてきた。
 とっくに日の落ちた暗い部屋の中で、イッルは前後を逆にした椅子に座り、背もたれの上で腕を組み合わせたまま、じっと私の顔を見つめている。私はベッドの上に腰掛けて、イッルの言葉を待っている。

「早く髪とかして準備しろよ。こっちはもうスタンバイしてるんだし――」
「あのなニパ」
 イッルが何も言わないので、私から口火を切ると、イッルの低い声がそれを遮った。
「……話、聞いたゾ」
「何を」
「司令室に陳情に行ったんダッテ?」
「うん。でさ、司令も――」
「やめろヨナそういうの。ここは軍隊なんだゾ?」
 イッルは無表情なまま、平坦な口調でそう言った。

「なに……言ってんだよ」
「エルマさんの事は命令ナンダ。それに対して勝手に意見述べたりなんてするんじゃナイ」
「え? あの……」
 思わぬ方向から反論されて、私は言葉に詰まる。

「で、でも。そ、そうかも知れないけどさ。司令だって賛成してくれたし……」
「……」
「悪い事、したか? 私」
「そうは言ってないヨ。デモナ」

 イッルは曖昧な視線を床に落とす。悪戯を企む時のニヤニヤ笑いが削げ落ちた、何考えてるか分からないこいつの表情。綺麗で近寄りがたくて、見ていると不安になる顔。その顔のまま、イッルは静かに語り始める。

「――ニパ。お前ヘルシンキの出身だったよナ」
「そうだけど」
「私はソルタバラ。知ってるカ?」
「……うん」
 私はうなずく。人類とネウロイが戦う前線の傍、ラドガ湖のほとりにある街の名前だ。
「今あそこは、ネウロイに占領されてるんだ。私がここに来る前、あそこは戦場になった。
 あいつら冬も夜も関係ないから、いつも備えてなきゃいけなくてさ。兵士のおっちゃんたちはマイナス四十度の寒さに耐えて雪濠の中を走り回り、砲火を散らして戦ってた。
 私達民間人だって、空襲のサイレンが鳴ればすぐに退避壕に逃げ込まなくちゃいけなくてさ。
 空襲が始まれば、頭上では高射砲の爆煙の傘が開き、地上では落下した爆弾が雪混じりの土塊を街の鐘楼よりも高く放り上げる。爆音と瓦礫が降り注ぐ音を聞きながら、私達は暗闇の中でそれが途絶えるのを息を潜めて待つ。そして壕から出るたびに、街がどんどん崩れていくのを見つける。いつの間にか誰かがいなくなっているのに気づく。そんなことが何日も続いた。
 まぁ、それも瘴気が来るまでだったけどな」
 イッルは淡々と話し続ける。
「エルマさんの事も見たよ――」
 イッルは窓の外の夜空に目を向けた。
「弾丸を身体に受けながら、ネウロイと戦ってた」

「イッル、お前……」
 言いかけた言葉を私は飲み込む。
「――余計な事考えるなよニパ。私はただお前に、事実を知って欲しいだけだ」
 平坦な口調。透明な表情と曖昧な視線。同情も憐憫もごめんだという意思表示。
ヘルシンキだって空襲はされたけれど、強力な高射砲部隊に守られていたから、大きな被害を受けてはいない。私はそんな凄惨な世界を、まだ見たことがない。イッルが子供時代をすごした場所、戦場になった町。そんな世界があることを、私はまだ知らない。
 イッルの言葉は続く。
「でもさ。お前もこれから、そういう世界に行くんだ」
「……」
「気を使ってくれるのは嬉しい。でも私たちが行くのはそういう所なんだ。
 だからさ、いつまでも子供みたいなこと気にしてちゃ駄目なんだ。私の事のために、命令を曲げるなんて事考えちゃ駄目だ。
 そうじゃなきゃ、お前だってこの先……」

 そうかもしれない。私が知らない世界を、こいつは見てきたのかもしれない。
 私が見ている世界と、こいつが見ていた世界。それは決定的に違うのかもしれない。でも。だからって……。

「──イッル」
 彼女の名を私は呼ぶ。

 それとこれとは話が別だよ。お前は今無事で、ここにいて、あの人を待ってるんだろ?

 大尉に言われて気づいた。本当は分かってた。
 こいつと私が、まるで違ったものを見ている。そう思い込んでいたのは、多分私の方。こいつが何を考えてるか分からなくて、近寄りがたく感じてたのは、多分私の方。いくら未来が見えるからって、綺麗だからって、こいつは。

 イッルの手をとって立ち上がらせる。何すんダヨ、とわめくイッルの手を引いて立ち上がらせる。防寒着を片手でつかんでイッルを部屋から引っ張り出す。

 こいつは未来が見えて、何を考えてるか分からなくて、綺麗で、タロット占いが趣味で、妖精さんを信じてて、結構甘えん坊で悪戯好きで多分寂しがりで実は面倒見が良くて普段の言動からは想像もつかないほど優しくてエルマさんとサルミアッキが大好きで――

「来てよ」

 ――今日11歳になる、私の大事な友達。




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5. - イッル -



 ――こいつは時々、予想もつかない事をする。
 まっすぐで真面目で、でもその頑張りは大抵どこかピントがずれてて。こいつはそんな奴だけど。

「ニパ、痛いって」
「うるさい! お前が出てこないと駄目なんだよ!」
「ナンダヨそれ! 人の話聞いてるか!?」
 これはやりすぎだろ。こっちの講義をまるっきり無視しながら、痛いぐらいに私の腕を握り締めて私を引きずっていくニパ。

「離せって!」

 基地中の注目を浴びながら廊下を折れ詰め所を突っ切り、屋外に引っ張り出された所で、ニパの手を振り払った。
 振り返ったニパとにらみ合う。日の落ちた広い滑走路を背に、基地から漏れる明かりに照らされながら、ニパが肩で息をついている。白い息を吐きながら、私の顔をにらみ付けている。

「何すんだよニパ……オマエなんでそんなに勝手なんだよ!」
「なんでって……お前、誕生日祝われるの嫌なのか?」
「そうは言ってない! だけどその為に変な事するなって言ってんだ!」
「……」
「……頼んでないだろ。私。やめろよな、そういうの」
 ニパはびくりと身体を引く。蹴られた犬みたいな目で一瞬私の顔色を窺い、でもすぐに目に力を込めて私の事を睨みつける。
「……本気で、言ってんのかよ」
「そうだよ! 何で分かんないんだよ?」
「嘘だ」
「嘘じゃネーヨ!」
 叩き付ける様に言っても、視線の力が微塵も揺るがないこいつに、私の苛立ちが募る。ああもう何て言ってやればいいんだ。しつこいニパを叩きのめしてやりたくて、頭の中で言葉を探す。

「――じゃあ」

 分からず屋。空気読めよ。何でそんな事するんだよ。だれがそんな事していいって、して欲しいって言ったよ。
 命令は命令なんだ。私達がやってることは戦争だ。いくら望んでも、欲しがっても、そんな現実の前に私の感情なんて入り込む余地なんてないんだ。そうやって気分を落ち着けて、波風立てないようにしてる所に勝手に踏み込んでかき回すなよ。変な期待持たせるなよ。大体何で私の事なんかを、お前が心配すんだ――

「じゃあなんで、あの人がいないと駄目だなんて言ったんだよ」
「──」
 ――しまった。
「いて欲しかったんだろ? あの人に」
 見抜かれた。今朝うっかりこいつに言ってしまったことを思い出して、私の思考が霧散する。
「それなら、そう言ってくれてもいいじゃないか」
 一人分の防寒着を私の手に握らせて、ニパは背を向ける。雪を踏みしめながら、暗闇の中へ歩き去る。

「──イッル。あのさ」
 闇の中から、私の名を呼ぶ声。穏やかなニパの声。
「お前の故郷みたいな、そういう世界は本当にあるんだろう。これから私もそんな世界を、嫌でも見ることになるんだろう。
 ……でもさ」
 シュッと何かを擦る音。灯される小さな炎。マッチの炎に照らされて、ニパの姿が浮かび上がる。
「お前が無事で、私やエルマさんと会って、ここでこうやって一緒にいられる。
 それだって本当の事だろ?」
 ゆらゆらとゆれる炎がニパと、その隣に置かれたドラム缶を照らしている。
「私にとっては、大事な本当の事」
 ニパはドラム缶の中にマッチを持った手を差し入れる。火付けに火が燃え移り、オレンジ色の光がニパを照らし始める。
「……お前、何考えてるか分からないって思うときもあるけどさ、それでも結構楽しいんだ。私。
 お前に会う事が出来て、一緒にここにいられることが嬉しい。それを知ってて欲しいんだ。私は」
 ドラム缶の中に並べられた薪に火が燃え移り、次第に火勢を増していく炎。
「あの人だって、きっとそう思ってるよ」

 ドラム缶に背を向けて歩き出すニパ。
「なに……言ってんだよ」
 夜を照らし始めるた、炎に照らされるニパの背中に向かって、つぶやいた。
 ――ほんと、空気読めない奴。
 こっちの気持ちはお構いなしかよ。誰がこんなことしてくれなんて言ったよ。
 悔しくて、むず痒くて、叫びだしたいほどに照れくさくて。去っていくニパの後を走って追いかけた。

「イッル? 何だよ」
「どこ行く気だよ、お前」
「滑走路に沿って火を点けて来るんだよ。そうじゃないと着陸できないだろ?」

 冬のぶ厚い雲に遮られて月の光が届かない地上。背後でさっきニパが点けた炎に照らされて、行く手にもう一つのドラム缶が見えた。きっと滑走路を示すように、同じ様にドラム缶が並んでいるんだろう。誘導灯がないここで夜間着陸をさせるには、確かに必要なことだけど――
「……暗い所を一人で歩いてるお前を見てると、何か寂しそうじゃんかよ」
「私が?」
「お前の事だから、遭難するかもしれないしな」
「なんだよそれー」
「だからついててやる。感謝しろよな」
「そっか。どうもな」
 ニパが振り返ってにへらと笑う。
 私とニパは雪を踏んで歩く。次のドラム缶にたどり着いたとき、ニパが再びマッチを擦りながら言った。
「――でもさ。そうだね」
「何がだよ」
「少し、寂しかった」
「え?」
「エルマさんが帰ってこないって言ったとき、お前が結局、何も言わなかったからさ」
「そっか……」
「うん。あのさ」
「……何だよ」
「まだ、怒ってるか?」
「怒ってネーヨ」
「ほんとか?」
「……今日だけだかんな」
「えへへ」

 長い滑走路の脇に並べられたドラム缶に火を灯し、また基地の前に戻って振り返る。白い雪面の上、暗闇を裂いて立ち上る炎が、まるで夏至祭の篝火の様に夜を照らしている。それを眺めていると、ニパがぎゅうっと私の手を握ってきた。
 そして私とニパは空を見上げる。あの人がここに戻ってくるのを待つ。

(――ちゃんと、来るかな)

 タロットを引こうと、ポーチに手を伸ばしかけてやめた。手袋越しに私の手を、ニパの手が握り締めている。確かに伝わってくる、痛いぐらいの力。
(そうだな)
 大丈夫だって、その手がそう言っている様に思えて、私はその手を握り返す。

 分厚い雲に覆われた暗い空を二人で見上げる。
 二人とも同じ空を見てる。きっと同じ事を考えて、同じ物がその目に映るのを待ってる。

(――まだかな)

 炎を頼りに舞い降りてくる、赤と緑の翼端灯を。




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6. - イッル -



「駄目ですよーエイラさん。こういう時は楽しい事を優先しないとー」
 疲れてないか? 休んだ方がいいんじゃないか? そう言った私を抱きしめながら、エルマさんは私に言った。
「遅くなってごめんね。エイラさんの誕生日なのに」
「……エルマさんが謝ることじゃねーだろ」
 大げさに頭を撫でられながら乱暴に返事をする。ニパと隊長に見られているのがすごく恥ずかしい。
「こいつさー、すごい寂しそうだったんだよ」
「……う、うるさいなー」
 ああもうニパ、そういう事いうな! ていうか見るな! ぐーりぐーりと頭を撫でられながら、心の中でそう叫ぶ。

「エルマさん、準備出来てるからさ」
「あ、はい」
 エルマさんはようやく解放して、そして今度はニパを抱きすくめた。
「ニッカさんも随分頑張ってくれて……」
「ん……うん」
 今度はニパが抱きすくめられて、頭を撫でられる。もごもごと返事をするニパ。ひひ。照れてる照れてる。
「で、でもさ。準備は第一中隊の人に手伝ってもらったし」
「アホネン大尉が!?」
「うん。大尉もイッルのことをお祝いしたいって……」
「え……? エルマさん?」
「アホネン大尉に目をつけられたんですか?」
「い、いや、目を付けられたって言う訳じゃなくて……」
「大丈夫ですか何もされませんでしたか!? 勧誘されてませんか!? 寝る時は部屋にちゃんと鍵をかけないと!」
「いやそういうのじゃないから! 怖がらないで!」
 地獄に! 地獄に落ちます! 取り乱すエルマさんに向かって、ニパが慌てて言い訳を始める。

(――ソウダナ)

 きっとこれだって、本当の事。
 馬鹿馬鹿しくて微笑ましい二人のやり取りを見ながら、さっき聞いたニパの言葉を思い出した。
 空にはネウロイが舞い、地上を砲火が飛び交う世界の中で、確かにある大切にしたい時間。守りたい人。例え未来がどんなものでも、これからどんな世界を見たとしても、私と出会えた事を祝おうとしてくれたこいつの事を、きっとこの先、私は何度も思い出す。

「イッル……行こう?」

 ようやくエルマさんから解放されたニパが、手を差し出して私の名を呼ぶ。
 イルマタル。私の名前。天と海の間を彷徨い、海鳥に出会った女神の名前。

「……ん」

 ありがとなを正面から言うのは照れ臭くて、黙って手を差し出すと、ニパは私の手を握り締めてにっこりと笑った。


「――お誕生日おめでとう、イッル!」


おわり

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「うん。射殺したまえ。捏造主義者だ」

書いといて言うのもなんですが、エイラは普通に子供時代を過ごしてたんじゃないかと思います。甘えるし。人懐っこいし。
それでも敢えて捏造したのは「イッルがニパを好ましく思う理由」を書きたかったから。ただの戦友だったら「イッルがいい奴だから」とか「積み重ねた時間」とかで説明できると思うんだけど、僕はそれ以上の理由を形にして残してみたかった。
もし「ありかも」ぐらいに思っていただければ望外の喜びです。

イルマタルの伝承についてもかなりはしょっているのであまり信じないように。つーか怖いタイトルだこれー!
読んで下さった方に感謝しつつ割腹。ぐばー。



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