ストライクウィッチーズのSSを書いてます。 その他百合中心で書くつもりですが、普通の日記も書くかも。
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SS「Buddy, Baby, Bittersweet 」 (エイラ×ニパ, 12KB)
初めて書いたニパSS。空回り気味。

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Buddy, Baby, Bittersweet


空と死神に嫌われながら、それでも私の居るべき所は天と地の間。

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「オカエリー」

 サウナのドアを開けた私を、一足先に入っていたイッルのニヤニヤ笑いが出迎えた。

「長かったナ。ちゃんと怒られてきたカ?」
「……うっさいなー」

 へらっと笑うイッルの顔を軽くにらんで、サウナの奥に進む。
 急ごしらえの仮設基地の割には、やけにしっかりとした造りのサウナ。まだ匂いの残る真新しい木を、がっしりと組んで作られた
ベンチの上に腰を下ろした。

 ……疲れた。体の後ろに手を突き、天井を見つめる。

 作戦を終えて帰投する途中で発生したエンジントラブルを抱えながら、黒煙を上げて帰ってきた私は、何とかたどり着いた基地
の滑走路に叩きつけられた。
 それだけならまぁ、よくあること、と諦めがつくけれど、その上司令室に呼び出され私は、基地を訪れていたお偉いさんの小言を
たっぷり拝聴させられる羽目になった。
 いつもストライカーを壊す私に目をつけていたそいつが、たまたま基地を訪れていた日に、たまたまそいつの目の前で
ストライカーを派手に壊し、さらに言うなら私がたまたま無事で、もうもうと上がる火煙の中から「まいったよー」と苦笑いしながら平気な顔で出てきたもんだから、そいつは相当頭にきていたらしい。
 そいつはねちねちと嫌味を垂れ流し、それにイライラが募った私は、いつの間にかそいつに噛み付いていた。
 その後のことは思い出したくもないけど、要は「ストライカーを借りてくるのに頭を下げて回る私の身にもなれ」と「うっさい。
手を抜いてるわけじゃないし戦果は挙げてる!」の言い合い。
 最後は双方にらみ合いの上、そいつは「転属させてやるからな」と捨て台詞を残して席を立った。
 隊長はかばってくれたし、気にするなとも言ってくれたんだけど。

「(……やっぱり、ツイてないなー……)」

 はぁ。ため息を付いた私を、隣にいたイッルが見ている。
 何だよ、と聞くと、イッルは私の首筋を興味深そうに見つめた。
「あれだけ派手に落ちてないのに傷一つないって、いつみても不思議だナ」
「……今更驚くことでもないだろ」
 疲れてる私に向かってあまりに能天気なイッルの言葉に、カチンと来ながら言い返す。
「それが私の魔法だからな。体質みたいなもんだ」
「死神に嫌われてんダ。ニパは」
 何がおかしいのか、彼女はニヒヒと笑う。
 あれだけ空から墜ちておきながら、入院すらほとんどしたことのない私は、こいつの中でそういう事になっているらしい。

 死神の好意は別にいらないけど、空から墜ちるから死神の好意を試すような事になるわけで。それはきっと、私が飛ぶスオムスの
空まで私を嫌っているからだって思えて。
 体には傷一つないけれど、たまに私は、こんな沈んだ気分になることがある。

「……それにしても、なんか熱くないか? 今日のサウナ」

 黙っているとどんどん暗い考えになっていきそうで、私は口を開いた。
 体をなでていく熱気がいつもより強い。イッルのそばに置かれたストーブの中は、勢いよく上がる炎で満たされ、ストーブの上
に置かれた石を熱し続けている。

「お。いいとこに気づいたナ」

 イッルはにやりと笑って、手に持った白樺の枝を雪の浮いたバケツに突っ込み、それを使って石の上に水を振り掛けた。じゅう、
と音を立てて湯気が立ち上り、部屋の熱気をかき回していく。

「……ニパが落ち込んでると思ってナ。今日はサウナの妖精さんに本気出してもらってんダ」
「……お前まだ妖精さんとか言ってんのかよ」

 本気ってお前。どぉっと疲れをにじませた声でいってやると、イッルが口を尖らせる。
「信じてないのカ? せっかく頼んでやったのにサ」
「そうかー。わざわざ頼んでくれてありがとうなー。ようせいさんに」
「何だよー。感謝に心こもってないゾー」
「感謝なんかするかよ。
 ……別に、落ち込んでなんかないからな」
 イッルから目をそらして前を向くと、イッルはそばによってくる。そして手に持った白樺の枝で私をぺしっと叩いた。
「いて!」
「すな、おじゃ、ない、ナ。ニパ、は」
 ぺしぺしと叩きながらそれに調子を合わせて言うイッル。緑の葉がざわざわと私の顔にまとわりつく。
「……やめろって」
 うっさい。それからうざい。手で枝を払いのけると、イッルはつまんねーの、といいながらベンチの上で胡坐をかいた。
「ナンダヨモー。勝手にむくれてんなよナ。どうせまた転属させてやるとか、つまんないこと言われたんダロ」
「そうだけど、そうじゃない」
 なんだか苦しい言葉を言ってしまい、そっぽを向いた。そのまましゃべってると、今の気持ちを見透かされそうだ。

 ……本当のことを言うと、こんなとき、こいつとあまり顔を合わせたくない。
 同じ空を飛びながら、無被弾無撃墜のこいつ。かたや墜落を繰り返すツイてない私。そんな相手に励まされても惨めになるだけだ。

 おまけにこいつときたら、こういうときにべたべたべたべたと。デリカシーって物がないのか。お前には。
 ツイてない奴にはそっとしておいて欲しい時があるんだよ。

 別にむくれてもない。落ち込んでもいない。……まぁ、ちょっとは沈んでるけど。
 小言をたれたお偉いさんにも言ったけど、ツイてないのは、私のせいじゃない。私が悪いわけじゃない。
 空戦の腕は自信があるつもりだし、整備に手を抜いてる訳でもない。たまたま私が履いたストライカーが、なぜか壊れる
というだけだ。私は何も悪くない。
 それでも、

「(……いつまで飛んでいられるのかな……)」

 時々そんな事を考える。
 ストライカーが貴重な物だってことは、私にも分かってる。特にスオムスは貧乏空軍だから。
 今日私が啖呵を切ってしまったお偉いさん達からすれば、彼らが揃えたストライカーを片っ端から壊している私に対して、
何やってんだ、と言いたくもなると思う。
 すまないと思うし、いたたまれない気持ちにもなる。
 でも、私がいつか、空から放り出されるんじゃないかと思う度、私の胸は痛む。いつまでも空を飛び続けられないと思うことは寂しい。
 軍隊は自分の行き先を自分で決められるところじゃないから。私が空にあこがれていても、飛び続けられるかどうかは、私が決めら
れることじゃないから──

「うひゃぁっ!」

 首筋から背中にかけて走り降りる冷たさを感じて、心臓が縮み上がった。
 背をのけぞらせながら振り返ると、雪の塊を手に持ったイッルと目が合う。

「……冷たかったカー?」
「冷たいよ! 心臓止まるよ! 何すんだよ!」
 バケツの中にあった雪を私の首筋に投下したイッルに向かって怒鳴り返す。

「死んだらどうすんだよ! ひどいじゃないか!」
「……そうか?」
 暢気そうにイッルは首をかしげる。……こいつは。この為にわざわざ雪探して仕込んでたのかよ。

「……人が考え事してるときに邪魔すんなよ」
「だってニパが急に黙り込むからさー。気になるダロ?」
 じとっとした目でイッルは私を見て、そして言う。
「……やっぱり落ち込んでるんじゃないカ」
「……。当たり前、じゃんか」
 私は体を回してイッルの視線から逃げた。
 イッルのことだから、多分最初から分かっていたんだろうけど。自分が沈んでいる事を見抜かれてしまうのは悔しくて情けない。
 無被弾無撃墜のお前に、私が飛ぶために悩んでいるなんて、本当は知られたくない。
拗ねた気持ちを抱えてるなんて知られたら悔しいし、もし私だけがこんな思いをしてる事を気にされたら、私はきっとこいつの隣で
飛んでいることがいたたまれなくなる。

「ニパー、元気出せヨー」
 うつむいた私の背中に引っ付いてくるイッル。
「転属って言われるって何度目だヨー、どうせまた脅しなんだから気にすんなッテー」
 私の首に手を回し、つむじをぐりぐり押しながらだらだらしゃべるイッル。
「……何度も言われてるって事は、それだけ危ないってことだろ?」
 痛いって、と肘でイッルのわき腹を押しやる。
「ニパが頑張ってるのは、隊にいる奴ならみんな分かってルゾー」
「……そうでもしないと私は空にいられないからな」
 イッルの言葉にいちいち逆らう私。なんていうか、まるっきり拗ねた子供の言葉だ。

「大丈夫だって。何があっても、ニパはちゃんと空に戻って来れっかンナ」
「……何でそんなこと分かるんだよ、お前」

 自分の言葉は棚に上げて、イッルのその言葉は神経に触った。
 こういう奴だって分かってるけど、こいつの無意味に楽天的な所は時々許せなくなる。
 何の根拠もない慰めはいらない。こいつお得意の占いの結果で分かったようなことを言うならなおさら許せない。

 むしろ私の気持ちなんて分からなくていい。私の悩みなんて知らなくていい。お前なんてただニヤニヤ笑って飛んでればいいんだ。
 私はそんなお前の相棒でいたくて、同じ空を飛んでいたくて──

 イッルは少し黙って、私の頭に手を置かれる。静かなイッルの声が聞こえた。

「空を目指すときのニパは、嬉しそうだからナ。私と同じように」
「……」
「だから分かる。何度墜ちても墜とされても、ニパは飛べるっテ」
「……」
 イッルの言葉を聞いて慌てて下を向く。鼻の奥に、つんとした痛み。
「……そういう事、言うなよ」
 お前に言われると、なんか、泣きたくなる。

 私が何も言えないでいると、下を向き続ける私の両脇に、すーっとイッルの手が突っ込まれた。
「第一、ニパにそんな事いうなんてひどいよナー」
「おい……」
 その指が当然のように私の胸を両脇から包み込む。
「私だって隊長だって困るんだカンナ。お前がいなくなったらサー」
「何してんだお前……」
 そしてもむ。もみ始める。離せ、と掌底で顎を突き上げてやってもその手は止まらない。
「ここのみんなだってそう思ってるゾー」
「離せバカ離せ! この変質者!」
 もうすっかり棒読みになりきった台詞を吐きながら、しつこく私の胸をもみ続けるイッル。
「む……?」
 そしてその手が止まる。
「……むむ……?」
「お前……いいかげんに……」
「おぉー」
「……やめろって……」
 私の手に顎をぐいぐいと押されながら、イッルは私の胸の大きさを確かめるように数度強くもみしだき、そして私の耳元で
最高級に嬉しそうな声を上げた。

「……うん、ニパは、頑張ってるヨ!」
「~~~~~~~~!」

 イッルを突き放し、胸を手で覆う。
 立ち上がってイッルのそばにあるバケツを手に取る。小さな雪片が浮かべた水の入ったそれを持ち上げる。

「……イッル」
 背を向けたまま語りかける。
「何デスカ? 頑張ってるカタヤイネンさん」
 何を頑張ってるのかどう頑張ってるのかわからないし聞いてもやらない。もう死ねお前。
「今日こそお前を……」
 ほだされかけた私がバカだった。お前はただ、ここで死ね。
「……今日こそお前をツンドラの上の赤いシミにしてやる!!」

----


 夕食の時間になっても食堂に来ないイッルを、部屋まで呼びに戻った。
 結局私はイッルの抹殺に失敗し、のぼせてふらふらしながらサウナを出た私は、その後壊れたストライカーのパーツ取りをして
過ごした。同じくのぼせてたイッルは部屋に帰ると言っていたけど……

「イッル。飯だぞ? 出て来い」
 外から呼びかけても返事がない。なんだよ、と文句を言いながらドアを開けて入り、薄暗い部屋を見回す。灯油ランプに照らされた
部屋の中、かすかな呼吸の音が聞こえた。

「……イッル?」
「……」
「……おい」
 ……寝てんなよ。人が働いてるときにさ。

 シーツの上に毛布を広げ、それにくるまってイッルが眠っていた。
 くるまった毛布から寝顔を覗かせて。シーツの上に髪を広げて。薄く開かれた唇からかすかな寝息が漏れている。
「……おい」
 起きろ、飯だぞ、と小声でいいかけて、私は言葉を止めた。
「……」
 眠る彼女の隣に腰を下ろす。かすかにきしむベッド。

 息を潜めて、静かなイッルを見つめる。磁器のように白い彼女の肌にランプが映り、その淡い灯火に合わせて、その顔にかかる
私の影が揺らめく。
 無駄に綺麗な肌と無駄に艶やかな髪と、無駄に整った寝顔。
「なんだよ……」
 ……イッルのくせに。見つめてしまった事が恥ずかしくて、そんな言葉を漏らす。

「あのな……」
 とくん、と心臓の跳ねる音を感じながら、彼女の髪に触れた。
「……変な気の遣い方すんなよな、お前」
 ……礼も言わせてくれないんだからさ、
 さっきの事が、このバカなりの気遣いだってことぐらいは、私にも分かっていた。
 「私と同じように嬉しそうだ」というイッルの言葉。言葉だけを取れば、何の根拠もない慰めかもしれない。
 でも空への憧れこそが、私が空を目指す理由。それをこいつは知っている。それは私とこいつが、分かち合えるものだと
分かってくれてる。何も言わなくても。
 それを見透かされたことは、悔しいけど、でも、嬉しい。
 天然なのか、考えた末なのか、多分その両方なんだろうけど。こいつが引っ掻き回してくれたおかげで、沈んでいた私の気持ち
はどうにかなっていた。ツイてないのは変わらないけど、嫌だけど。胸から不安が消えていた。

 何考えてるのか、あるいは何も考えてないのか分からない奴なのに。口を開けば、自分勝手なことしか言わないくせに。隙を見
せれば胸揉んでくるくせに。
 ニヤニヤ笑いながら何もかも見抜いているような、不思議な私の相棒。何かあれば、勝手に世話を焼いて行く彼女。ありがとう
なんて絶対に言わないけど。

 空と死神に嫌われながら、それでも私が居たい所は天と地の間。
 お調子者で小憎らしくて、お人好しな彼女の隣。

 静かに眠るイッルの顔に、唇を寄せた。

「──」

 頬と耳の熱さを感じながら、唇をぬぐう。
 ……胸のお返しだからな、バカ。


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