ストライクウィッチーズのSSを書いてます。 その他百合中心で書くつもりですが、普通の日記も書くかも。
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SS「ACROSS」 (エイラ×サーニャ, 8KB)
ACROSS


「フゥ……」
 何度目かの客を追い返して、私はドアについてる覗き窓をぱたんと閉めた。

「何だか疲れるよナ……。やっぱり貨物列車の方がイイヨ」

 窓の側に座っているサーニャに話しかけた。

「……あの時はなんか楽しかったね」

 サーニャは窓の外を流れる森を見ている。私はその隣に腰をおろした。

 バルトランドを通り抜けて、スオムスへ向かう列車の一等席、木造のコンパートメントの一室。その座席に私達は座っている。
 時間からみて、もうそろそろ国境に近づく頃だ。ずっと会えていなかった人たちへの懐かしい気持ちがこみ上げて来る。

 でもまだ、先は遠い。国境を通ってスオムスを抜けて、私達の向かう基地まで。それまでに限界が来ないかどうかが心配だ。
 主に私の忍耐というか、堪忍袋の。

 コンコン、ドアにノックの音。
 ──マタカヨ。ドアの方を私はじろりと睨む。

「エイラ、誰か来た」
「無視ダ無視」

 腕を組んでもう一歩も動きません、のポーズ。これ以上物好きの相手なんかするもんか。

 もうこれで何度目だろう。バルトランドの軍港を出てから、列車の乗客が何度も私達の客室を覗きに来ていて、私とサーニャはそのあしらいにいい加減疲れ果てていた。

 要はウィッチである私達を生で見たい、って人たちだ。
 報道なんかで顔が知られてるのは知ってるから、驚きはしないけれど、見知らぬ人から黄色い声でうわああかわいいいほんとに小さいいと言われ続けるのは戦闘以上に疲れる。
 せっかく激励してくれる人たちに仏頂面なんかしたくない。でもずっとこうだと、「どこから沸いてくるんだお前ラ」、と荒れた気持ちにもなってくる。

 それにその上、特に困るのは、サーニャ目当てに部屋を覗き込もうとする連中で。

「中にいるのリトヴャク中尉でしょ! 見せて!」

 私はイイノカヨ! っていうよりサーニャはそういうの苦手なんだヨ!
 案の上恥ずかしがってうつむいてしまうサーニャ。そのサーニャを見ようと室内に向けられる視線を、ひきつった笑顔でブロックしながら、謝ったりいいわけしたり。
 そして困りきったサーニャがギャラリーに手を振ると、一気に人数が倍に増えた。
 ──どこに隠れてたんだお前ら。

「ゴメンナ。連れが疲れてるカラ」
「ゴメンナ。連れが寝てるカラ」
「私予知使えるんダケド、すぐ席に戻らないと不幸になるゾー」
「車掌デスガ二人ともさっき降リマシタ。ナカニハイマセン」
「ゴメンナ。中でニシンの缶詰開けてるカラ」

 サイン欲しがったりカメラ持参で写真を一枚と言ってくる連中を、言い訳やら脅しやら小芝居やらを駆使して追い返す。
 激励してくれるのはうれしいし、出来ることなら冷たくしたくはない。だけど、もう、そっとしておいて欲しい。

「ウー…」

 ノックの音はしつこく鳴り続けていたが、やがて間遠くなり、そして途絶えた。
 心の中で謝っとく。……ごめんな知らない人。二度と来んなよ。

「……いいの?」
「ほっとけばいいダロ」

 にしてもばらしたのは誰だ。車掌か? 車内販売のお姉さんか? いずれにしても罪は重い。
 ほんとはもっと静かに列車に揺られてたかったのに。サーニャと二人で。

「……それより、疲れてないか?」
「平気……それより、もうすぐスオムスだね」
「ウン」
「……エイラ、なんかうれしそう」
 にっこり笑ってサーニャは私の方に寄ってくる。
「会えてうれしい? レイヴォネンさん? 達と」
「ウン。そりゃあね。……私たちは、家族みたいなもんだからナ」
「そうなんだ」
 そう言って笑ったまま、私の顔を覗き込んだ。なんだか急に恥ずかしくなる。
「あ、ごめんナ。私のことばっかリ」
「ううん」
「……サーニャは、心配じゃないカ? その、知らないところに来て」
「少しは、うん、あるけど……」
「大丈夫ダッテ」
 ごととん、ごととん、と揺れながら、列車は進む。
「……サーニャが来たらみんなきっと喜ぶゾ。エル姉もニパも」
 ……というかみんなサーニャを猫かわいがりしそうだけど。
 それがエル姉なら許す。ニパには百年早い。
「うん……心配は心配だけどね」
 サーニャはさらに近づいてきて、にっこりと笑って私の顔を見上げた。
「大丈夫だから」
「そ、そうならいいんダケド……」
 腕同士がくっついて、下手をすればサーニャの体温とか感じてしまいそうで、急に言葉があやふやになる。体が勝手に逃げそうになる。
 そ、そういえばもうすぐ国境ダヨナーとか話を逸らそうとしたところで、サーニャが口を開いた。
「……エイラは」
 ……え?


 ぎぎ、ぎいい。


 何か言おうとしたサーニャの言葉を遮るように、耳障りなブレーキの音。随分急なブレーキだったようで、二人とも前のめりに椅子から転げ落ちそうになる。
 慌てて腕を伸ばし、サーニャの体を支える。

 ぎいい、ぎい、と立てて、列車が止まる。

「……だ、大丈夫カ?」
「…………うん、平気」

 サーニャの体を支えて椅子に座り直す。抱きとめたときの体の感触が手に残ってて、サーニャの顔を見られない。
 見慣れてたはずなんだけど、サーニャが白かったり細かったりいい匂いだったりをこういう場で感じると、なんか、心臓が跳ね回ってあああ私はなに考えてんだ! 落ち着け!
 むりやり視線を窓の外に向けた。

「……国境、ダナ……」

 バルトランドと、スオムスの国境。山の中の森を切り開いて設けられた検問所。そこに列車は止まっていた。
 さっきのことを思い出しそうで、うつむいたまま無言で待つ。サーニャも何も言わない。入国管理官がやってくる頃には、ようやく心臓も落ち着いてきた。

 入ってきた管理官に、二人分の身分証と書類を渡す。

「……リトヴャク少尉は、オラーシャ陸軍からの転属ですね?」
「ソウダ。異動の命令書もアルダロ」
「ええ」

 管理官は書類を確かめ、書類にサインをすると、
「良い旅を」
 そう言って出ていく。

 書類を受け取り、私の分を鞄に突っ込む。
 これで入国の手続きはおしまい。あっさりしたもんだ。
「はい、コレ」
 振り返ってサーニャに身分証を差し出した。ようやくサーニャと目を合わせる。

「……ようこそ。スオムスへ」
「うん」

 かしこまった挨拶が何だかおかしくて、二人同時にくすっと笑った。


----

 『ほんとはネウロイ運んでます。黙っててゴメン』

 そう書かれた張り紙をドアの外に張る。

「……これで誰も来なくなるといいんだけどナ」

 『今ネウロイ寝てます。お静かに』とも書いたし。どうかそっとしておいてくれます様に、と祈りながら客室に戻る。

 ごととん、ごととん。
 スオムスの森の中を、列車は走り抜けていく。

 客室の窓の外を、木々が流れ去っていく。さっきと同じ森の中だけど、景色が何だか違う。暖かい、というか、甘い、というか。とにかく優しく柔らかい景色。スオムスに帰ってきた、そう思うと森の向こうに見える空の色まで違うように思える。

 そして、また窓の外を眺めているサーニャ。スオムスの森と空の下にサーニャがいる。そのことがとても不思議で、とてもうれしい。

「──サーニャ」

 残りの旅路ももう少し。いい気分のまま、隣にいるサーニャに声をかけた。

「……早く戦争終わらせて、サーニャの家族探しにいこうな」
「え?」
 外の景色を見ていたサーニャは、驚いた様に振り返る。
「早くお父さんやお母さんに会いたいだろ?」
「うん……」
「だからさ、スオムスとオラーシャのネウロイさえなんとかなれば、きっと探しに行ける。
 ……無事だったら、私も一緒に行くよ。サーニャが生まれた街も見てみたいしさ」

 本当はこの先の事なんて、言うべきじゃないと思うけど。でも、今日ぐらいは、精一杯の約束をしてもいい気がした。

「うん……」
「……私はスオムスに戻ってこれたケド、サーニャも家族に会えなきゃ、幸せじゃないダロ?」
「……」

 でも私の言葉を聞いて、サーニャは黙り込んでしまう。膝に置いた手をにぎにぎと握っている。
 ……あれ、私何か変なこと言ったか。
 えっと、と言おうとしたとき、

「……そんなことないよ、エイラ」

 サーニャはつっと寄ってきて、私の肩に体を預けた。

「お父様とお母様にはとても会いたいけど」
 うん。それはよく分かってる。

「……今うれしくないなんてこと、ないから」
 え?

「……エイラは、どうなの?」
 えーと。

「私と一緒で、うれしくないかな」
 真っ赤な顔で言うサーニャ。

 あー。

 ごめん。そこまで言われてやっと分かった。
 そういえば、解散して出てくるときも、この列車でも、私がどう思ってるか、って言う時間なかったもんな。
 ……ていうか、ほんとダメダナ。私は。

 こわごわと、サーニャの細い手首を取る。
「……うれしいに決まってる、って」
 一度言ってしまえば簡単なもので、言葉が出てくる。

「501が解散すれば離れ離れって、ずっと思ってタシ」
 ああでも駄目だ。恥ずかしい。ここから飛び出したい。でもだめだ。
 サーニャが胸元にしがみついてくる。目をそらすなんてできない。したくない。

 ……覚悟を決めてサーニャに手を回し、今度はちゃんと抱きしめた。

「当たり前だろ。ほんとは、ずっと一緒にいたかったんだから」

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