ストライクウィッチーズのSSを書いてます。 その他百合中心で書くつもりですが、普通の日記も書くかも。
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SS「ねこだまり」 (ルッキーニ&サーニャ, 9KB)
ねこだまり


 いつもの夜間哨戒から帰って、静まり返ったハンガーの中で、私は装備を片付け始めていた。
 今日はなんだか、いつもより眠い。飛んでいる間も、温かくなってきた風が、なんだか心地よくて仕方がなかった。
 早く寝よう……そう思いながら、装備の片づけを始める。

 ストライカーユニットは、出撃の時と同じ場所に戻して、フリーガーハマーは、その隣に置いてある台車の上に置いておく。そうすれ、整備士さん達が点検と整備をしてくれる……はず、だったんだけど。
 私はその台車の上を見て動けなくなった。

「……今日は、ここなんだ……」
 台車の上に毛布を引いて、眠っている子が一人。
 白い毛布の上に黒髪を広げて。その上に褐色の顔を載せて。すやすや寝息を立てながら、ルッキーニちゃんが眠っている。

「……どうしよう……」
 ……起きてくれないかな。
 ルッキーニちゃんは毛布の上で丸くなって眠っている。白い服の下から伸びる褐色の足がたたんで、小さな手を軽く握って。うじゅじゅじゅ、にゅにゃー、という声を寝息と共に漏らしながら、彼女は眠っている。
 ルッキーニちゃんは、いつも基地のどこかで眠っている。木の上とか、ハンガーの中とか、寝る所はいろいろで、どこにいるのか、誰もはっきり分かっている人はいない。朝見当たらなくてみんなが大騒ぎして、結局台所の戸棚の中にいた事もあった。

 それでも大体は見晴らしのいい木の上か、ハンガーで寝ていると聞いた事があるけど、私がハンガーでルッキーニちゃんを見つけたのは、今日が初めてだ。珍しい事なのかもしれないけど……。
 置き場所、どうしよう。私は困って、片手に持ったフリーガーハマーを見る。

 私は考えて、結局、フリーガーハマーを床に置いておくことにした。あとで整備士さんが台車に載せるのに困るかもしれないから、ルッキーニちゃんが起きてくれればそれが一番良かったんだけど。

 ストライカーユニットを脱いでから、もう一度ルッキーニちゃんの側に戻る。毛布を広げたまま、すやすや眠っているルッキーニちゃん。
(……毛布、かけてあげた方がいいのかな……)
 私は平気だけど、朝晩はまだ寒い。エイラがいつもそうしてくれるのを思い出して、私はルッキーニちゃんの毛布をの端に手を伸ばす。かがんで毛布の端を掴んだところで、ルッキーニちゃんが目を開けた。

「ん……」
 ルッキーニちゃんはもそもそと起き上がり、私の方を見る。毛布の上にぺたんと座ったまま片手で顔をこすって、私の方を見た。半分だ開いた目をまばたかせながら、私を見ている。
「……んー?」

「え……?」
「……でうー……」
 ごめんなさい、起こしちゃった?、と言おうとしたら、ルッキーニちゃんの身体が、まっすぐにこちらに倒れて来た。胸でルッキーニちゃんの頭を受け止めて、私も一緒に座りこむ。
「……むじゅじゅじゅじゅ……」
 ルッキーニちゃんは私の腰に抱きついたまま、頭を私の胸に預けて、また寝息を立て始める。

 ルッキーニちゃんの細くて長い腕が、力強く私の腰に回されている。そのままごにょごにょと何かを言いながら、頭をすりすりとすり付けてくる。
「にゃー……」
 気持ちよさそうに微笑むルッキーニちゃん。

 ……どうしよう。
 頭を私に押し付けて、ルッキーニちゃんが眠っている。私の膝にあたっているルッキーニちゃんのおなかが、寝息にあわせてゆっくりと動く。抱きつかれたまま動けない私。
「……ルッキーニ、ちゃん……」
 頭に手を当てて、ごめん、起きて……? と言おうとしたら、
「……ン?」
 ルッキーニちゃんの頭が私の胸の中でもぞりと動いた。
「…………あれ……?」
 そして聞こえるルッキーニちゃんの声。身体を起こして、ぺたり、と、何かを確かめるように私の胸に手を当てる。そして慌てて、私の胸の上を平手でぺたぺたとはたき始める。
「……ナイ」
「……え?」
 私は聞き返す。
 いきなり言われたから、ルッキーニちゃんが唐突に言い出すから、何が「ない」と言われているのかが分からなかった。
「……ルッキーニ……ちゃん?」
 ないぞ、ない、としきりに言いながら私の胸を探っているルッキーニちゃん。
「……やめて……」
 私はルッキーニちゃんの手を掴む。
「…………ナイ……」
 ルッキーニちゃんは片手で私に抱きついたまま、私の顔を見上げる。
「……」
 そりゃ、シャーリーさんやリーネさんほどは、ないだろうけど エイラの事だって、本当はうらやましいんだけど。
 そんなに何度もいう事ないじゃない。私はルッキーニちゃんの顔を見返す。
「むぅー……」
 ルッキーニちゃんは悲しそうに私の顔を見ている。悲しいのはこっちなのに、と、私も口を尖らせてルッキーニちゃんを見る。
 そうやって、彼女の深い緑の瞳を見ていると、ルッキーニちゃんのまぶたが、また急にとろんと落ちた。
「……うじゅ……」
 ルッキーニちゃんの体が、また私にもたれかかってくる。私は据わったままで、その体を受け止める。じゅじゅわー、と気持ちよさそうな声。ルッキーニちゃんは、また眠り始めてしまった。

 ……困った。
 私に抱きついたまま、眠ってしまったルッキーニちゃん。そしてそれを振りほどけずに、座ったままの私。
 ごめん、起きて、と何度か揺さぶってみたけれど、彼女はふにゃふにゃ呟くばかり。体と足を私の方にひきつけて、本格的に眠り始めてしまった。頬に手を当てると、ぎゅっと私の体を抱きしめてくる。

 抱きつかれたまま、ルッキーニちゃんの横顔を見る。

 誰かが落ち込んでるときも、構わず隊内の雰囲気を盛り上げてくれる、ムードメーカーで。それだけじゃなくて、この子もこの部隊の中で、トップクラスのセンスを持っている子。私とは全然違う人。そう思っていたけれど。

 でもすらりと伸びた足をまげて、私の胸の中で眠る褐色の顔は、とてもあどけなくて。ルッキーニちゃんの体は、とても温かくて。
 天才的なセンスを持つエースで、その明るさで部隊を盛り上げる、部隊のムードメーカーで。
 でもこんなに小さい、いたずら好きで、甘えん坊な女の子。

 私とまるで違う何かが、突然胸元に飛び込んできたような不思議な気持ち。うれしい何かが私の胸元を訪れたような、とても暖かな気持ち。
「……シャーリー……」
 ルッキーニちゃんはそう呟いて、私の体を抱きしめる。頭を擦り付けて甘えてくる。
 そう言えば、シャーリーさんの事大好きだもんね。ルッキーニちゃん。私は微笑む。ルッキーニちゃんの頭の上にそっと手を載せる。

 さっきは、寝ぼけて私の事をシャーリーさんと間違えたのかもしれない。なぜ間違えたのか全然わからないし、言われたことは、正直悲しかったけど。
 でもシャーリーさんのこと大好きだもんね、しょうがないかな、と思って。その言葉がエイラの口癖の一つに似てることを思い出して、私はなんだか恥ずかしくなった。
 ゆっくり体を起こし、優しくルッキーニちゃんの頭を膝に載せる。
「んゅー……」
 もごもごといいながら、身じろぎをするルッキーニちゃん。

 その寝顔を見つめながら、私の口から歌がこぼれ出る。
 眠りが安らかでありますように。元気な目覚めでありますように。
 ルッキーニちゃんの髪に手を置き、思いを乗せて私は歌う。
 昔お母様が歌ってくれた、オラーシャの子守唄を、私は小さな声で歌う。

「んー? ……サーニャ……?」
 固目を薄く開けて私を見ながら、ルッキーニちゃんが呟く。
 私がよしよしと頭をなでると、彼女はぎゅうっと抱き返してきた。

 規則正しい寝息と、膝の上の心地よい重み。ルッキーニちゃんの暖かさ。
 溜まっていた眠気が、とろとろと解きほぐされていくのを感じる。
 子守唄を歌いながら、私は眠りに包まれる。暖かさに包まれて、私のまぶたが落ちていく。


<その後> おまけです

「……もう来ちゃったのかー。早かったねー」
 サーニャを探しながらハンガーまでやってきたら、シャーリーに出くわした。
「サーニャ、見なかったカ? 帰ってるはずなんだケド、どこにもいないんダ」
「……いやー」
 シャーリーは気まずそうに目をそらして笑う。
「……見た事は見たんだけどなー……」
「なんダヨ、どうしたんダヨ」
 突っかかるように私が言うと、シャーリーは「来なよ。多分面白いから」と手招きをした。その後に続いて、ハンガーの隅の方に向かう。

 自分のベッドの上で今日は来ないのかな、としばらくの間迷っていて。こっそりサーニャの部屋を覗いて、でも誰もいなくて。
 夜中に招集はかからなかったから何もなかったはずだしと思いながら、帰ってるはずよってミーナ中佐に聞いて。それで基地じゅう探し回って。シャーリーに会って。
「ウ……」
 そこで見たものに、私の足が止まる。

「オイ……オマエナニシテンダヨ……」

 サーニャ、の、膝、に、頭を、載せて、ルッキーニ、が、眠って、いた。

 サーニャの膝に頭を載せて、なにやらもごもご言いながら、ルッキーニが眠っている。そして、サーニャもルッキーニに寄りかかるようにして眠っている。その手がルッキーニの頭に優しく撫でるように添えられている。
 サーニャの寝顔はあどけなくて、ルッキーニもなんか幸せそうで、寝顔に笑みが浮かんでいて。客観的に見れば、とてもいい絵なのかもしれないけど。

 でも、すごく面白くないのは、うらやましいのは、
 (うー。なに抱き付いてんだオマエー……)

 ……叩き起こしたいのは山々だけど、それじゃサーニャも起こしてしまうわけで。
 せめてルッキーニの髪になんか結びつけてやろうか──スパナでも。
 そう思ってルッキーニのほうに手を伸ばす。そんな私の後ろから、シャーリーが言った。
「……まだまだ、甘えん坊だからさ……」
 工具を持った手を腰に当てて、しょーがないなー、という目でルッキーニを見ているシャーリー。
「……たまには許してやってくれよ」
「うー……」
 確かに、サーニャはとても安らかに眠っている。寄りかかるルッキーニとバランスを取って。ルッキーニの頭に当てられた手はとても優しげで。
 こうなるまでに何があったのか知らないけど、多分それは楽しい事じゃないかと思えて。それはサーニャにとって、とてもいいことなのかも、って思えて。
 ……でもあれだ、こら、くっつくな。

「でもさー……」
 悶々としている私に構わず、シャーリーはルッキーニの側に屈み込み、今にもとろけてそうな、甘ったるい顔で言う。
「こうして見るとかわいいだろー?」
「……ちぇ」
 その言葉に私は舌打ちを一つ。
 確かにこうやってサーニャとより添って眠るこいつは、ニヤニヤしてないこいつの寝顔はかわいい。
 いやそのルッキーニの横にいるサーニャはもっとかわいいけど。というか美しいけど。

 サーニャの寝顔に免じて、許してやる事にする。
 サーニャの膝を占領して、眠り続けるルッキーニ。その耳元に向かって、今日だけだかんな、と念を押すように言った。




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